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日本遺産の神楽産業 柿田勝郎面工房訪問

日本遺産の神楽産業 柿田勝郎面工房訪問

石見神楽産業発祥の地として知られる島根県浜田市。その中でも県内外沢山の神楽面を製作する柿田勝郎面工房を訪れ、その魅力に迫りました。(2019年9月取材)

工房の奥、作業場に潜入

柿田面工房二代目、柿田兼志さん
石膏型から抜き出した粘土型
粘土型に貼られた石州和紙
大蛇の蛇頭の和紙の厚み
木のヘラで丁寧に石州和紙を貼り重ねる
石州和紙を小さくちぎりながら貼り重ねる
堂々とした幟が目印、工房外観

 浜田市の柿田勝郎面工房さんにお邪魔しました。 まず始めに、工房を見学させて頂き面が出来る工程や、石州和紙で作られた面がどのようにして誕生したのか、お話を聞かせて頂きました。
 面作りについて、2代目の柿田兼志さんに工房の案内をして頂き、工房の奥の作業場へ。 壁一面に石膏の型が並べられており、他の部屋にあるものも含めると約1,000個ほどあるそう! ひとつの型をベースに複数の表情を作ることが出来るので、保管場所がいくつあっても足りないほどの数になるそうです。石州和紙を使った神楽面は、粘土で型を作るところから始まります。
 工房には粘土で作られた大きな型がありました。乾燥することで2周りも縮むので、それも計算して作られるそうです。 さらに大きなものや複雑なものになると、型も何分割かに分けるそうで、蛇頭はより複雑な為12パーツにも分けられます。粘土が乾いてから圧着という作業で木のヘラを使い、和紙を貼っていきます。これを何度も繰り返し面の表情を作っていきます。 和紙は手でちぎり、繊維と繊維を重ねて一枚に繋ぎ合わせることで密着し、丈夫で軽い石州和紙の面が出来上がるそうです。

長浜面独特の技法、「脱活」

脱活の様子

 ここからは、面を作る工程で1番印象的だった「脱活」の工程です。元々面作りは長浜人形の作り方を応用したもので、以前は市木面が主流だったそうです。より複雑な形を作る為に「型を壊して取り外す」“脱活“という技法が生まれたそうです。 粘土がくっついた状態の「脱活前」と、粘土を外した「脱活後」の面を持ち比べさせてもらいましたが驚くほどに軽く、木彫りの面と比べると5分の1の重さです。和紙の面が出来るまでは舞手さんも一苦労だった事でしょう。 脱活は入り組んだ形や空洞を作る事が出来るので、大蛇の下顎などもその方法で作られています。
 たまに、大蛇の頭からカラカラ音が聞こえる事があるそうですが、その正体は「乾いた粘土のカケラ」なんだそう!?
 脱活を実際に見せて頂きましたが、あれだけ綺麗な型を壊すのが勿体ないと感じましたが、それは「必要な無駄」であって、この作業がないと絶対に完成しない大切な工程なのです。 利便化が進む現代であえて「壊すものを作る。」とても神秘的に感じます。
(記事および映像はFacebook用に配信したもので、テロップなど一部その名残が残っています)

面への穴開け作業

目や鼻など穴を開ける作業
焼いた鉄の棒で開け、大きさも様々
凹部分には彩色の際に隈取りを入れ、陰影表現
浜田の石見神楽面は古き伝統を大切にし、進化を続ける
マスコットのウルちゃん
彩色後の迫力の鬼面

 次の工程では、目や鼻、髭や髪を付ける為の穴を開ける作業です。 いく層にも重ねられて頑丈になった面は紙と言えど簡単には穴が開きません。 どのように開けるかというと、熱したコテで焼き穴を開けます。
 密着した紙は硬く、燃えるというより焼切るという感じです。使い込まれた大きなキリのような道具を使用して穴を開けていきます。 次に胡粉という白い化粧を施します。人で言う「ファンデーション」の役割にあたり、主にはまぐりや牡蠣の貝殻と“にかわ”という豚の骨の髄液を混ぜて作られたものです。昔から自然の物を使って作り続けておられるそうです。

仕上がった面が沢山!ギャラリーへ

ギャラリーの様子

 いよいよ仕上がった面の沢山並ぶギャラリーへ!
 まず目に飛び込んでくる沢山のお面に驚きました。 まるで木彫りの面かのような重厚感があり、その風景は壮観です!   石州和紙の最大の特徴と言える「隈取りで陰影をつける」部分が彩色で行われます。軽くて丈夫な和紙の面は非の打ち所がない様に思えますが、何層も和紙を重ねて作る事で木彫りの面にある表情の深い陰影が出にくく、柔らかな印象を受けます。そこに、隈取りで陰影をつけることによって下地塗りまでとはガラッとイメージが変わり、そこから鬼の面や、勇ましい神の面になります。この隈取りがある事でより一層表情が伝わるそう。
 和紙の面を知らない方が木彫りの面と見間違う度に、嬉しく思うと兼志さんは仰っていました。「きちんと先代(長浜面の諸先輩方)の思いを受け継いでいるんだと感じられる」と。
(動画音声は、浜田市松原神楽社中「発声」)

作者の思いが面に現れる

初代:柿田勝郎さんと、二代目:柿田兼志さん
柿田勝郎さんが独学で創った初めての面
物腰柔らかくお話してくださった、柿田勝郎さん
面作りのお話を沢山してくださった柿田兼志さん
店内ギャラリーの神楽面
店内ギャラリーの神楽面
店内ギャラリーの神楽面
店内ギャラリーの神楽面
工房理念

 ギャラリーには沢山のお面がありますが、その中でとても目を引くお面がありました。部屋の角から玄関先を見つめるように飾ってあるお面です。 初代:柿田勝郎さんにお話を伺うと、面作りを始めた頃に作った作品で、無心で作りあげた第1号のお面だそうです。
 「プロは白紙でなければいけない。初心を忘れないためにいつもあそこに飾っている」と仰っておられました。
 インタビューの最後に、面を作るにあたってこだわりや信念をお伺いさせて頂きました。 それはポスターにもあるように、 「あなたのこだわりに私はこだわりたい」 これが信念だと仰っておられ、先程の「プロは白紙」の言葉がスッと落ちてきました。 これは予想もしてなかった答えだったのですが、とっても心に響きました。
「舞手が演じて、始めて面が完成する」かっこいい以外の言葉が見つかりません。
 今回の取材で初代・二代目柿田さん親子そろってお話を聞くことができ、丁寧に色々なことを教えて頂きました。迫力の石見神楽の裏にはこのような神楽産業があり、舞い手である神楽団体を支えています。日本遺産に認定された伝統芸能「石見神楽」をぜひ、本場石見の地で鑑賞してくださいね☆


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柿田勝郎面工房
〒697-0062 島根県浜田市熱田町636-60
TEL.FAX0855-27-1731
〔定休日:毎週水曜日〕


(2019年8月14日取材 文:ちはる 写真:KAO)

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Column

柿田勝郎面工房の月々の様子をFBで見る

柿田勝郎面工房さんでは、月々のギャラリーの様子をフェイスブック配信しています。沢山の新作神楽面の移りゆく様子を見ることができますよ! オススメです!!

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